研究概要 |
・「テレフタル酸(TPA)の高温水中での熱安定性評価」および「TPAの溶解度測定」 溶解度測定用装置を構築し、全有機炭素計(TOC)による定量を試みた。 ・ポリブチレンテレフタレート(PBT)の高温水中での熱分解実験 エンジニアプラスチックとして利用される代表的なポリエステル樹脂であるPBTの分解実験を行い、275℃、30分の条件でほぼ完全に分解できることを確認した。主な分解生成物は、TPAとテトラヒドロフラン(THF)で、収率90%および80%で回収することができた。原料モノマーのうち、ジカルボン酸であるTPAがほぼ定量的に回収されるのに対し、ジオールの1,4-ブタンジオール(1,4-BDO)の収率は2%にとどまった。そこで1,4-BDOの高温水中での安定性を検討した。水のみでは250℃、30分間の処理で、1,4-BDOが分子内脱水して生成するTHFが収率10%で得られたが、大部分の1,4-BDOそのまま回収された。一方、同条件でTPAを1,4-BDOと同モル量を共存させたところ、1,4-BDOはほぼ定量的に、THFに変換された(収率85%)。このことから、PBTは高温水中で、原料モノマーであるTPAと1,4-BDOに加水分解されるが、生成したTPAが高温水中で酸触媒と作用することで、1,4-BDOの分子内脱水反応が同時に進行し、結果的にTPAとTHFが生成物として回収されたものと考えられる。 プロセスフローならびにシミュレーション計算 PBTの分解実験を基に、シミュレーションソフトによるPBTの加水分解・生成TPAおよびTHF回収システムのプロセスモデルを構築、必要なエネルギー試算を行った。微量生成する1,4-BDOを分離せず、再利用水とともに反応系に戻すことで、蒸留にかかるエネルギーが大幅に減少することを見出した。 以上の結果について、国際学会等で発表した。
|