研究計画に従い以下2つの研究を平行して行った。 1)強酸性を示す新規ヘテロポリ酸触媒の開発:前年度の研究でPreyssler型ヘテロポリ酸(H_<14>NaP_5W_<30>O_<110>)は熱安定性は低いが水溶液中で広範囲のpH領域で安定であることが明らかとなった。そこで、水溶液中での酸強度およびエステル加水分解酸触媒能を測定し、現在、酸触媒として実績の高いKeggin型ヘテロポリ酸(H_3PW_<12>O_<40>)と比較した。トリメチルホスフィンオキシドをプローブ分子として用いた酸強度測定家kkは、Preyssler型ヘテロポリ酸はプロトンあたりKeggin型ヘテロポリ酸より高い酸強度を示すことが明らかとなった。また、エステル類の加水分解では酢酸メチルや酢酸エチルなどの小さい分子に対してはPreyssler型ヘテロポリ酸はプロトンあたりKeggin型ヘテロポリ酸と同程度の触媒活性を示したのに対して、エステル基が大きくなると触媒活性は低下し、Preyssler型ヘテロポリ酸はプロトンあたりKeggin型ヘテロポリ酸より活性が低くなることが明らかとなった。 2)新規ルイス酸触媒開発:ルテニウム置換Keggin型ヘテロポリ酸のルテニウムのルイス酸性の検討を行った。前年度の研究で、ルテニウム置換Keggin型ヘテロポリ酸のルテニウムがとルイス塩基であるピリジンと反応し、ルテニウム置換Keggin型ヘテロポリ酸のルテニウムがルイス酸として機能することを明らかにできた。今年度は、この構造を明らかにするために合成した化合物の単結晶化を試み、2つの化合物で単結晶構造解析に成功した。単結晶構造解析の結果、ルテニウムにはピリジン誘導体がRu-N結合を介して結合していることが明らかにでき、ルテニウム置換Keggin型ヘテロポリ酸のルテニウムがルイス酸として機能している直接のデータが得られた。
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