研究概要 |
N2^+イオンを室温でルチル型TiO_2(100)単結晶に照射量1×10^<17>/cm^2~5×10^<17>/cm^2で注入した.イオン注入後,その一部を大気中573Kで2時間熱処理し,イオン照射によって生成した点欠陥の回復を図った.SRIMコードを利用したモンテカルロ計算から,注入された窒素濃度は表面からの深さに対して増加し、深さ90nm付近で最大を示すことが分かった.そこで,高活性触媒について,位置敏感NK殻吸収端ELNES測定による深さ分析を行った結果,試料表面近傍のELNESには,活性窒素種由来の398eVと401eVの2つのピークが観測されたが,窒素濃度が高くなる試料内部のELNESほど不活性窒素種由来の401eV付近の鋭いピークが成長した.このことから,注入された窒素濃度によって窒素の局所構造が変化し,触媒活性に影響を与えていることが分かった.ELNES強度を利用して各深さ領域における窒素の定量を行った結果,活性窒素種を生成させるうえで有効な窒素濃度は約2%以下と見積ることができた. 高活性触媒について,活性窒素種と不活性窒素種の ELNES スペクトルに分離し,各々の空間分布を可視化した結果,活性窒素種は表面から内部までほぼ均一に分布しているが,不活性窒素種は試料内部に主に分布していることが分かった.不活性触媒では,不活性窒素種が表面近傍にも多く分布しており,触媒全体に均一に分布している活性窒素種の触媒機能を阻害していることも明らかとなった.
|