研究課題
地球上の全ての植物が、その葉緑体内でマンガンと酸素を主成分とする天然触媒を使って水を分解(Water Splitting)し、エネルギー(電子とプロトン)を得ている。本研究では、マンガンと酸素からなる二酸化マンガン微粒子を人工触媒として水分解に応用する研究を実施してきた。その結果、触媒効果によって同位体水(H2180)から同位体酸素1802が発生することを実験的に明らかにし、種々の観点から追試を重ねた結果、可視光を照射せずとも同二酸化マンガン触媒によって水分解が生じることを確認した。本成果は、太陽光が含む可視光が水分解を引き起こすために必要なエネルギー値を有しないにもかかわらず、葉緑体中における天然触媒が水分解していることを説明する成果である(現在論文投稿準備中)。次に、葉緑体内で水から獲得されたエネルギーは、チロシン蛋白とP680色素(太陽光によって酸化された状態)によって天然触媒から引き抜かれて後段に運ばれることは既知である。そこで本研究では、燃料電池システムの中に水で湿潤した二酸化マンガンを電解質として組込むことで、水分解の結果生じたプロトンと電子を引き抜くアクセプター環境を人工的に整えた。その結果、通常のセラミクスは500℃以上でないとプロトン導伝性を示さないにもかかわらず、室温下でセラミクスの一種である二酸化マンガンが8×10-5S/cm程度のプロトン導伝性を示すことを証明した。本成果は、直ちに水素センサ用の電解質への応用につながった。すなわち、ppmオーダーの低濃度にしか対応できない既存の水素濃度計測センサを革新し、0.1~99.9%と高濃度対応型の計測を実現した(論文・学会等で発表済み)。さらに本研究では、水起源の電気エネルギーで帯電させた二酸化マンガン微粒子による二酸化炭素の有機酸への変換を試みた。その結果、水中で二酸化炭素が有機酸に変換される反応を見出した(特許出願済み)。現在、同反応効率を向上させるための実験的研究を継続している。
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