研究概要 |
昨年度までに開発してきた二次元電気泳動解析用プログラムを改良し、2枚の電気泳動画面を比較して、対応するタンパク質スポットのボリューム値の比較が自動でできるようにし、ボリュームの相関係数を計算できるようにした。それを酵母による一本鎖抗体の生産に適用し、抗体の生産量は1.5g/Lに達し、増殖フェーズと生産フェーズで電気泳動結果が大きく異なることを確認し、、相関係数を用いて定量的に識別できることを示した。この結果をミネアポリスで開かれた2012年米国化学工学会(AIChE)年会で発表したところ好評でポスター賞を受賞した。 さらにこの二次元電気泳動をプラスチック表面や半導体表面に特異的にバインドするペプチドのスクリーニングに適用した。これは抗体を半導体センサーやSPRセンサー表面に結合させ、疾患マーカーの新規検出システム開発に応用させようとしたものである。 以上の研究は菌体内に存在するタンパク質の定量化や同定に関するもので、スポットの形状も円形に近く技術的にほとんど困難なく進められた。しかし昨年から問題となっている、大量の標準タンパク質を二次元電気泳動にかける実験はことごとくうまくいかなかった。市販されているタンパク質はほとんど粉末の状態でリン酸バッファー等に溶かして二次元電気泳動にかけてもスポットが横線を引いてほとんど円形のきれいなスポットを得られなかったからである。二次元電気泳動について標準サンプルを用いて定量かを確認した論文が見つからないがその原因はこのようなところにあるのではと思われる。いろいろと原因を探った結果、粉末にされたタンパク質は可溶化が非常に難しいことがわかってきた。現時点ではビーズビーターなどで徹底的に可溶化させ、その後十分可溶化していないものを15,000rpmで取り除くなどの工程を経ることによってある程度改善されてきた。しかし高濃度のタンパク質を分析することは無理でさらなる分析方法の改良を試みている。
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