研究概要 |
コンビナトリアルバイオエンジニアリングの手法を用いた、変異体タンパク質ライブラリーの大量作製とその大規模なスクリーニングは、産業用途に好適な酵素タンパク質を取得する上で強力なツールになると考えられる。我々は、これまでの研究で、アルギン酸カルシウムビーズ中に核酸、タンパク質、あるいは細胞を封入する技術開発を行ってきた。本技術を用いれば、ビーズ内に酵母を包摂し、ビーズ内で酵素反応を起こさせることにより、反応後の標識分子の溶液中への拡散を防ぎつつ、活性の高い表層提示酵母細胞をビーズごとセルソーティングにより取得できると考えられる。本研究では、独自の細胞包摂技術を基礎に、広範な応用を可能とする、酵素表層提示酵母の活性検出によるスクリーニング系を開発することを目的としている。平成21年度は,アルギン酸カルシウムビーズを用いた酵母細胞包摂法の最適化を行った。具体的には,逆ミセル法を用いることにより、直径約10μmのアルギン酸ビーズに酵母を生きたままトラップする方法を開発した。本方法では、4~10%Tween85を含むイソオクタン中で、酵母を懸濁させたアルギン酸ナトリウム水溶液を逆ミセルとして乳化させ、そこに塩化カルシウム水溶液を加えゲル化させることにより、酵母をトラップしたアルギン酸ビーズを得る。実験では,Aspergillus aculeatus由来のβ-グルコシダーゼ表層提示酵母(211株)を用い,細胞濃度,アルギン酸濃度,界面活性剤濃度を検討した。その結果,ビーズ一つあたり,平均約1.2個の酵母をトラップすることに成功した。さらに,蛍光基質を用いた顕微観察により,トラップされた酵母の表層β-グルコシダーゼは,活性を保持していることがわかった。
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