研究課題
コンビナトリアルバイオエンジニアリングの手法を用いた、変異体タンパク質ライブラリーの大量作製とその大規模なスクリーニングは、産業用途に好適な酵素タンパク質を取得する上で強力なツールになると考えられる。我々は、これまでの研究で、アルギン酸カルシウムビーズ中に核酸、タンパク質、あるいは細胞を封入する技術開発を行ってきた。本技術を用いれば、ビーズ内に酵母を包摂し、この内で酵素反応を起こさせることにより、反応後の標識分子の溶液中への拡散を防ぎつつ、活性の高い表層提示酵母細胞をビーズごとセルソーティングにより取得できると考えられる。そこで本研究では、独自の細胞包摂技術を基礎に、広範な応用を可能とする酵素表層提示酵母のスクリーニング系を開発することを目的とした。平成22年度は,昨年度最適化を行ったアルギン酸カルシウムビーズを用いた酵母細胞包摂法によりAspergillus aculeatus由来のβ-グルコシダーゼ表層提示酵母(211株)を包摂し、包摂された酵母の表層β-グルコシダーゼ活性を効率よく検出する方法の検討を行った。具体的には、包摂酵母と基質溶液の反応条件(基質濃度、反応時間・温度)の決定を行い、未反応基質によるバックグラウンドシグナルとビーズ内の反応シグナルが十分に分離できる条件を見出した。さらに、本アッセイ系では、細胞分別後に包摂された酵母が生存し、増殖しなくていなくてはならない。そこで包摂の際、細胞の生存率に大きく影響する界面活性剤(Tween85)の濃度の検討と、包摂酵母からの再培養法の検討を行い、高い包摂率と生存率を併せ持つ条件の設定に成功した。来年度は、本年度の結果をもとに、実際にセルソーターを用いた活性酵母の濃縮を行い、本アッセイ法の有用性を示すことを目指す。
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Biotechnology Journal
巻: 5 ページ: 449-455
DOI:10.1002/biot.200900291
Applied Microbiology and Biotechnology
巻: 85 ページ: 1491-1498