研究概要 |
コンビナトリアルバイオエンジニアリングの手法を用いた、変異体タンパク質ライブラリーの大量作製とその大規模なスクリーニングは、産業用途に好適な酵素タンパク質を取得する上で強力なツールになると考えられる。我々は、これまでの研究で、アルギン酸カルシウムビーズ中に核酸、タンパク質、あるいは細胞を封入する技術開発を行ってきた。本技術を用いれば、ビーズ内に酵母を包摂し、この内で酵素反応を起こさせることにより、反応後の標識分子の溶液中への拡散を防ぎつつ、活性の高い表層提示酵母細胞をビーズごとセルソーティングにより取得できると考えられる。平成23年度は,昨年度までに開発した逆ミセル法により,Aspergillus aculeatus由来のβ-グルコシダーゼ表層提示酵母を1細胞レベルで包摂したアルギン酸カルシウムビーズを,基質としてTokyoGreen-βGluを0.25%含む反応液中で一定時間反応させ,ビーズを洗浄後蛍光顕微鏡で測光観察を行った。その結果,表層提示した酵母を包摂したビーズは,表層提示していない酵母を包摂したビーズや,酵母をなにも包摂していないビーズと比べて,10倍以上の蛍光強度を有しており,ビーズ内で酵素反応を進行させることにより,ビーズに包摂された酵母のβ-グルコシダーゼ活性を評価できることが判明した。次に,これらの包摂ビーズをセルソーターにより分離し,活性の違いによりソーティングできるかどうか調べた。その結果,ソーティングのフィルターを調整することにより,表層提示酵素の活性が高い酵母を濃縮することに成功し,本手法が酵素表層提示酵母のスクリーニングに有用であることが示された。一方で,濃縮された高活性酵母には一定量の低活性酵母が混入(コンタミネーション)しており,分離した酵母を再度培養し,同様の方法で分離した場合,活性の濃縮効率が当初予想していたよりも低いことが判り,今後の検討課題として残された。
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