本年度は、VEGF検出用蛍光分子プローブ及びFGF検出用蛍光分子プローブ設計・合成および性能評価を中心に行った。それぞれの蛍光分子プローブの蛍光発色団は、これまでに開発したタンパク質検出用試薬を改良し、標的物質との疎水性相互作用による複合体形成および分子内のICT状態の変化によって強い蛍光発光を誘起する部位として4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-4H-ピランを有するものおよびフルオレセイン誘導体とした。上記の蛍光発色団を、VEGF検出用プローブでは、VEGF受容体のVEGF結合部位(アミノ酸配列:GPGSGRGWVEICAADDYGRGPGSK)に導入した。また、FGF検出用プローブでは、ヘパリンに導入した。これらの蛍光分子プローブが、それぞれ目的とするタンパク質を特異的に認識するかどうかを、蛍光光度法を用いて確認した。その結果、VEGFおよびFGF添加前は、蛍光分子プローブからは微弱な蛍光が観察されたが、室温下、VEGFおよびFGFを添加すると、それぞれ目的のタンパク質と相互作用した時のみ、瞬時に蛍光強度の増加が確認された。検量線については、VEGF濃度およびFGF濃度と蛍光プローブの蛍光強度との間には良好な直線関係が成立した。表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて、蛍光分子プローブと目的とするタンパク質の解離定数を算出したところ、10^<-9>Mオーダーの値が算出された。また、妨害物質の影響について検討したところ、無機塩、還元剤、有機溶媒などは、蛍光プローブとVEGFおよびFGFとの反応に影響を与えないことが分かった。さらに、VEGF検出用蛍光プローブをナノピラーから構成される基板上に精密に固定化し、VEGFとの相互作用を確認したところ、単に溶液状態に分散させた時および平坦な基板に固定化させた時よりも、5倍程度の検出限界の向上が確認された。
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