本年度の研究目的は、最適情報量フィードバック制御則の有効性を飛行実験により実証することであった。さらに得られた成果の学会発表であり、前年度までに得られた成果を含めて、国際会議に2件、国内会議に1件の報告を行った。 1. 実時間最適計算手法の実装: 一般の最適計算手法は、線形近似を用いているために繰り返し計算が必要である。そのために収束までの計算量が不明であり、有限時間で最適解を得る衝突回避問題には適していない。本研究では、線形近似を用いないホモトピー法を用いた解法を適用した。近似がない非線形計算であるために、最適解を得るまでの計算量が確定している利点を活用した。実装に向けては、計算能力が低い搭載CPUで計算が可能とするためのアルゴリズムの開発を行い、計算時間の計測を行った。具体的には、帯行列となる逆行行列の計算を、小ブロックに分けて行う独自のアルゴリズムを用いた。計算量は軌道を離散化した計算点数に依存するが、1秒の計算サイクルに7点の離散化した軌道の最適計算が搭載CPUで可能であることが確認された。回避軌道の生成には十分な点数と判断でき、実装の目的は達成できた。 2. 飛行実験の実施: ダクテッドを用いた飛行体を用いて、飛行実験による実証実験を行う計画であった。通常の飛行時は地面効果を利用した低空飛行を行い、衝突回避を行う緊急時は上昇して三次元回避軌道をとることができる機体である。機体の高度は超音波高度計による計測値をファン出力にフィードバックを行う高度制御を行い、数㎜の飛行状態を維持することが実現できた。この地面効果を利用した通常飛行時は、上空を飛行する状態に比べて、約40%の出力減を達成できた。最適計算アルゴリズムの実装確認が遅れた関係で、最適軌道計算を実装CPUで確認する飛行実験を行うまでに至っていないが、実験に使用する機体の性能特性の計測まで行うことができた。
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