| 研究概要 |
本研究では,宇宙機の姿勢制御アクチュエータがCMG(Control Moment Gyro)である場合の,姿勢制御精度の向上を目的としている.CMGは高トルクを発生できるために宇宙機の高速の姿勢変更に適しているが,ジンバル軸に摩擦が存在するため宇宙機の姿勢制御精度に影響を及ぼす.本年度は,この摩擦の影響を実験的・定量的に評価するために,1軸の姿勢制御実験装置を製作した.この装置では焼結金属軸受を用いて下方から空気を送り込むことにより非接触状態で宇宙機の自重を支持し,また側方からも空気を送り込むことで回転軸の傾きを防ぎ,鉛直軸回りの自由な姿勢運動を実現している.姿勢制御実験装置における回転軸の回転角度は非接触のエンコーダで検出する.また,1軸姿勢制御実験装置の供試体となる1軸ジンバルCMGを設計・試作した.この1軸ジンバルCMGは比較的小型のもので,角運動量と出力トルクの最大値はそれぞれ1Nms,1Nm程度である.CMGは模擬宇宙機体の上に搭載し,電源や制御機器も機体に搭載して,実験中は外部とのケーブルによる電力,信号等のやりとりのない構成としており,制御演算は基板上の高速DSPで実現する.本年度は,これらの1軸の姿勢制御実験装置および1軸ジンバルCMGの各単体の基本動作を確認した.さらに,解析的な研究として,CMGの摩擦が宇宙機の姿勢制御精度に及ぼす影響とその補償方法を検討し,ジンバル軸に働く静止摩擦やクーロン摩擦が宇宙機の姿勢制御精度に及ぼす影響を表す解析式を導出するとともに,その影響の補償方法について簡単な制御則を提案し,その効果をシミュレーションによって確認した.
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