研究概要 |
本研究は,翼の層流化制御の実現や境界層遷移の予測能力の向上に不可欠な,翼の製作上避けることができない微小な壁面粗さが乱流遷移に及ぼす効果を解明し,壁面粗さを考慮したより現実的な遷移予測を行うための基礎研究である.本年度は,微小振幅の三次元正弦波状粗さ(正弦波上の壁面凹凸)が境界層遷移の始まりを支配するトルミーン・シュリヒティング波動(T-S波動)の増幅に及ぼす効果を零圧力勾配下で実験的に調べ,二次元正弦波状粗さと比較するとともに,今回の実験結果を基に従来乱流摩擦抵抗の視点から定義されている流体力学的滑面の概念を層流境界層の安定性の視点から検討した. 二次元粗さと三次元粗さでは層流境界層の安定性に及ぼす影響は大きく異なり,二次元粗さ(二次元正弦波上の壁面凹凸)が極めて小さな粗さ高さ(凹凸振幅)に対しても強い不安定化作用を示すのに対し,三次元粗さ(三次元正弦波上の壁面凹凸)では不安定性の促進効果がかなり弱くなる.ただし,境界層排除暑さの10%程度の振幅の三次元凹凸でも不安定性に作用する.従来の滑面の定義は乱流摩擦抵抗に関する実験値を基になされていて,粗さレイノルズ数(粗さ高さと壁面摩擦速度に基づく)が5という値が流体力学的滑面の臨界値として多くの文献に引用されているが,本研究で着目している層流境界層の線形安定性からの基準では,粗さレイノルズ数=5でも分布粗さが境界層の不安定性を十分促進し得るという結果が得られた.
|