研究概要 |
本研究は,スウォーミングシステム(あるミッションを達成するために複数の機体が個々の能力を有機的に結合し協働するシステム)に対して自律化技術を確立することを目的としている.また,この技術を検証するための実験対象として,UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人飛行機)のフォーメーションフライトを計画している.本年度の研究実施計画では,数値シミュレーションによる誘導則の検証およびUAV試作機の開発を挙げた. まず,誘導則にはポテンシャル関数誘導法に分岐理論を用い,その有効性を数値シミュレーションにより検証することが一つの課題であった.ポテンシャル関数誘導法は仮想的なエネルギ空間において目標状態を最小ポテンシャル,危険領域を最大ポテンシャルとなるように機体を誘導する方法で,スウォーミングシステムのような複雑なシステムに対してもリアルタイム性が保証できると考えられた.これに分岐理論を適用することで,フォーメーションをシングルリング,ダブルリング,クラスターと,それぞれの形態に素早く遷移することを数値シミュレーションで確認し,その成果をシカゴで開催されたAIAA Guidance, Navigation, and Control Conferenceで発表した. また,最終年度に実施する実証実験のためのUAV試作機の開発も行った.機体は発砲ポリプロピレン製で,センサには加速度計,ジャイロ,GPSを採用し,姿勢角についてはカルマンフィルタにより推定を行った.これらのセンサの精度および特性については,申請者が開発した姿勢制御用実験装置(公開特許番号US 2006/0293795 A1)を用いて検証した.センサ特性を取得した後,これらをUAVに実装し単機の自律飛行制御を試みた.自律飛行制御を行うためにはUAVの特性(安定微係数など)が重要となり,その同定方法について検討した成果を国内の学会で発表した.自律飛行制御実験に関する成果についても,前述の国際会議で発表した. 以上の研究成果により,平成21年度研究実施計画に挙げた技術的な基本課題は全てクリアした.
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