近年、浮体式の大規模洋上風力発電システムの研究開発が盛んに行われている。これらの風力発電システムは超大型風車を使う画期的なものであるが、大規模な計画ゆえに克服すべき課題も多い。そこで本研究では沿岸域で設置可能な中規模の風力発電システムを提案する。これは浮体式洋上風力発電システムに波浪推進装置を組み合わせたハイブリッド型洋上風力発電船であり、波による漂流、動揺を抑え、係留系にかかるコストを軽減することをその特徴とするものである。本研究では、提案する風力発電システムの実現可能性を検証し、想定実機に適した波浪推進装置の設計のための基本的技術的方向性を明らかにするために、まず想定実機の概念設計を行い、次に実験模型を製作して波浪中動揺実験を行った。模型実験では波浪推進装置の翼厚、翼弦長、機構部のばね定数を変化させ、波浪推進装置の特性を明らかにした。 まず概念設計の結果、想定実機は波漂流力を受けにくい双胴船型とし、大きさは600kW級風車を搭載するのに十分なものとして全長50m、全幅30m、乾舷9mとした。また予備模型実験を行った結果、ピッチ動揺の少ない船体幅5mの双胴船型を採用した。 次に、想定実機の1/50模型を製作し、波浪中動揺実験を行い、翼形状や翼を支えるばねの強さ等によってピッチ動揺及び前進速度がどのように変わるかを調べた。その結果、翼弦長は前進速度が最大となる波周期とピッチ振幅の大きさ、ばね定数は前進速度のピーク値とピッチ振幅の大きさに影響を与える等、波浪推進装置の波浪中特性を総合的に明らかにすると共に、波浪推進装置による漂流力及びピッチ動揺の低減効果を確認し、係留方法に1点係留を採用して横波中の動揺を回避することが可能であるなど、想定実機の基本的な実現可能性を確かめることができた。また固定翼の波浪推進装置でも前進することが分かり、浮体構造を簡略化できる可能性も示せた。
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