研究概要 |
船舶の環境において疲労き裂を確実に検出するために,送受信用圧電素子を配置し,送信用圧電素子を任意の波形で励振して超音波(ラム波含む)を発生させ,伝搬してきた超音波を受信圧電素子で検出し解析するシステムを構築した.その際,指向性圧電素子(探触子含む)を設計・製作し,送受信用の圧電素子として使用した. まず、板厚10mmの鋼板において,送受信の圧電素子間隔を変えて伝搬特性を調査した.励振周波数が2MHz付近では減衰による振幅低下が大きいため,長距離の計測には適していないが,伝搬時間が高精度で求められた.周波数が低い30kHz付近では,減衰が少なく長距離の測定に適している.伝搬モードは,伝搬速度から前者がクリーピング波,後者がSOモードと考えられる. 次に,超音波計測に及ぼすスリットの影響について検討した.2つの圧電素子の間にスリットが存在する時には,伝搬時間が増大し,受信波形の振幅が低下した.この現象はスリットを迂回した超音波を受信したもので,き裂評価に利用できると考えられる.2MHz励振に較べ,30kHz励振では振幅低下が小さく,計測しやすい事が分かった.また,スリットの直角方向からの超音波が回り込んでスリットに沿って伝搬する現象も,受信圧電素子をスリットに沿って配置することにより確認できた.この結果,感度が低いがスリットの長さの計測に利用できる可能性が確認できた. 最後に,2つの圧電素子の間に溶接ビード(隅肉溶接及び突き合わせ溶接)を位置させた計測を行い,超音波の振幅と伝搬時間に与える影響を検討した.2MHz励振と30kHz励振の超音波は共に,溶接ビードの影響は少ないことが分かった.溶接ビードに邪魔されない計測が可能と考えられる.
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