研究概要 |
1.水平き裂モデルと傾斜き裂モデルによる理論的検討 孔井と交わるき裂から発生するストンリー波の圧力場は,Tang and Cheng(1993)によって示されているストンリー波の反射係数と透過係数を求める手法とCicerone and Toksoz(1989)によって示されているき裂から発生するストンリー波の理論を組み合わせることで,P_b=EI_o(nr)_e^<i(k_zz-ax)>で与えられる.これを周波数領域に変換し,き裂の開口幅Lについて積分すると孔内で観測されるストンリー波の圧力場は,P_b=E'I_o(nr)sin(k_zL/2)になる.この式にはき裂の幅に依存するsinの振動項が含まれているのでき裂の厚さを評価できる.また,係数E'にき裂の動的通水率と圧力勾配を組み入れることで,オーバーシュートの大きさや継続周波数帯域を表現できるようにした. き裂が傾斜すると,孔とき裂の境界が楕円形状になりき裂開口部で流れの変化が生じ,境界垂直方向の広がりが波長と同程度になると波の運動が変化する.楕円の周長さと同じ円周を持つ等価円で境界形状を置き換え,き裂の垂直方向の広がりをモデルに組み入れることで,傾斜したき裂への対応を行った. 2.水平き裂での室内実験 孔を掘削した2つの岩石試料を組み合わせ,孔および岩石試料の隙間に流体を満たした状態で音波を測定する室内実験用音波検層システムを作成した.計測システムを広帯域化するために,広帯域の圧電トランスデューサと小型水中マイクロフォン,データレコーダを新たに導入した.ストンリー波のき裂透過係数に現れるオーバーシュートとき裂の開口幅との関係を求めた結果,低周波でのオーバーシュートは観測されたものの,大きさや継続周波数帯域に違いが見られ,計測システムとモデルに改良の必要があることが判明した.
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