浮選尾鉱中の白金の濃縮と定量的な分析手法を確立するために、物理選別を施して濃縮性を評価したほか、乾式処理による分析手法と白金の逐次分離系統の可能性を考察した。特に前処理として用いた磁力選別による白金の濃縮傾向と、乾式プロセスとして試金法を改良した系統分離の可能性を見出したのでその概要を以下に述べる。 本研究で用いたPGM(Platinum Group Metals、白金族)浮選尾鉱には、白金0.7g/t、パラジウム0.2g/tが含まれ主な鉱物組成はSiO_2、Fe_2O_3、MgCr_2O_4であることがわかった。この尾鉱に交番磁界型磁力選別機を用い、磁束密度120と240mT(ミリテスラ)で磁選を行った結果、磁着物精鉱と中間産物(片刃粒子群)、尾鉱(非磁弱物)とに分離できることがわかり、この段階で白金品位を約12.5g/t、パラジウム品位を1.6g/t程度まで濃縮できることがわかった。 さらに磁着物精鉱と中間産物を適宜混合し2次磁選(精選)を行うと白金品位で42g/t、パラジウムもほぼ同じ13g/t程度まで大幅に濃縮することができた。このとき、磁束密度を240mTとすることで白金、パラジウムの濃縮が顕著となり、特に白金はMgCr_2O_4の分離傾向と連動していることが明らかとなった。このことから尾鉱中の白金はMgCr_2O_4中に固溶された状態もしくは基本的に単体分離されていない状態で含まれていることが推察された。また、分析手法に基づく乾式プロセスでは、尾鉱にニッケル粉末(金属ニッケル)と硫黄を投入した試金法(ニッケル試金法)により、微量な白金族をニッケルボタン中に固溶させ定量的に回収できることが明らかになった。
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