研究概要 |
白金族(Platinum Group Metals:PGM)鉱山の選鉱尾鉱(鉱山廃宰)を対象に,尾鉱に含まれるPt(プラチナ)とPd(パラジウム)の再回収および高品位化を目的とする選別条件を調べた結果、浮選による分離濃縮の効果は十分に認められなかったが、(H21年度に実施した内容と同様の結果)磁力選別を最低2段で施すことにより磁着物中のPt品位を40~50g/t,Pd品位は10g/t以上まで濃縮することを明らかにした。 一方,PGM以外にも銅(Cu)-モリブデン(Mo)鉱山の選鉱尾鉱に着目し,浮遊選鉱法(浮選)を用いたCuとMoの再回収および高品位化を試みた。実験試料には,Cu-Moの精選工程から発生する尾鉱(精選尾鉱)を用いたが、このとき試料中のCuおよびMoを富鉱比で各々約4倍、10倍に濃縮することができた。この結果については、モリブデン(輝水鉛鉱:MoS 2)の表面疎水性による捕収効果が増し,接触角など表面性質との相互作用によりレアメタルであるモリブデンの濃縮が可能であることが示唆された。また試料の顕微鏡観察により,粗選尾鉱中のMoは一部片羽粒子として存在しているほか,微細な粘土鉱物(スライム)が共存していることを確認した。すなわち浮選前に,摩鉱と篩分けを組み合わせた単体分離・脱スライム処理を施すことで,品位,回収率ともに向上し,選鉱尾鉱の再資源化が可能であることが明らかとなった。 さらに黄鉄鉱(FeS 2)を大量に含む選鉱尾鉱を利用し、使用済み電子基板の粉砕物とともにオートクレープで高温高圧酸化浸出を行った結果、黄鉄鉱の硫黄分から生成する硫酸浴により、電子基板中の銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属が効果的に浸出することがわかり、尾鉱を利用した湿式処理技術の可能性を見出すことができた。
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