研究概要 |
200℃以下の廃熱を利用する水吸着式ヒートポンプシステムに用いる吸着材の熱交換能力が、含水率に依存することは確認されている。含水率を増やすために、A型ゼオライトNa_<2.1>(Al_<2.0>Si_<2.0>)O_8・4.3H_2O(含水率:20.8%)をYb^3+交換し(条件:0.05~0.005M YbCl_3水溶液、40℃、3時間)、29, 31, 45, 51%のYb^<3+>交換体を得た。TG-DTA測定より、交換率が高くなると含水率は増加した(22.7~25.4%)。DTG曲線は100℃、170℃、300℃付近にピークを示した。Yb^3+の交換率が高くなると、100℃付近のピークが増加し、170℃付近のピークは減少した。これは、100℃付近で脱水する水が増え、170℃付近で脱水する水が減少することを示す。 GTS型チタノシリケート(Na, K, H)_4Ti_4Si_3O_<16>・yH_2Oを、簡易型耐圧容器及び安全扉恒温器を用いて水熱法により合成した(条件:仕込み組成比TiO_2/SiO_2=0.32, A_2O/TiO_2=5.6、100℃または200℃、24時間)。Na仕込み組成=0, 25, 50, 60, 75, 100%の(Na, K, H)_4Ti_4Si_3O_<16>・yH_2O GTS微粒子(粒径8~13nm)が合成できた。XRDパターンはGTS単相として指数付け出来た。TEM観察より直径約1μmのナノ結晶集合体が生成されていること、微粒子間の間隙に穴があること、電子回折図より多結晶体になっていることが確認された。14mmHgの水蒸気圧下(25℃)で保存した試料のTG-DTA測定より、100、250℃及び300℃付近で脱水し、特に100℃付近で大量の水が脱水することが分かった。含水率はK型GTS;35wt.%、Na型GTS;33wt.%となり、Na仕込み組成による大きな差はなかった。低温で脱水する水について検討するため、室温~200℃(大気中)でTG-DTA測定を行った。200℃まで昇温した試料を14mmHgの水蒸気圧下(25℃)で保存すると、約20時間で昇温前の質量に戻った。同様の脱水と吸水の操作を7回繰り返しても、TG曲線に大きな変化はなく結晶構造にも大きな変化は見られなかった。アルカリ組成比50, 100%の試料について水和熱測定を行った。120℃以下で加熱脱水したNa仕込み組成=50, 100%の試料については、水和エンタルピーは約55kJ/molで、Na組成による大きな差はなかった。55kJ/molという値は、25℃における水の蒸発エンタルピー44kJ/molより大きいが、A型ゼオライト水の水和エンタルピー63kJ/molよりも少し小さい。これより、吸着した水は、表面吸着水ではなく、細孔内に吸着した水と考えられる。
|