研究概要 |
使用済み核燃料再処理工程で発生する高レベル放射性廃棄物(HLW)は、ガラス固化体にしたのち深地層中に保管される。本研究では、現在使用されているホウケイ酸塩系ガラスとは組成が異なるリン酸塩系において、多量の廃棄物を取り込めることができ、しかも、化学的安定性、耐久性に優れ、水に対する浸出率が小さく、廃棄物中のリン酸成分含有量の制限を受けることがなく、さらにNa溶出量が極めて低い、などの特徴を併せ持つ放射性廃棄物固化処理用ガラスの開発に成功した。ガラス組成は、組成-物性間に非線形性(リン酸異常現象)を示し、anomalousタイプのリン酸塩ガラスに分類されているリン酸マグネシウム系である。模擬HLW元素(Na,Sr,La,Mo,Mn,Fe,Te)を固化させたガラス固化体について、熱的安定性や耐水性の評価、振動スペクトルを用いた構造変化の検討を行い、さらにガンマ線を照射させたときの影響についても検討した。ホウケイ酸塩ガラス固化体の浸出率は10^<-5>/cm^2・dayオーダーなのに対し、リン酸マグネシウム系ガラス固化体では廃棄物を多量に含有させた場合でも一桁低い10^<-6>g/cm^2・dayオーダーとなった。廃棄物含有量が多くなると、ガラス中の架橋酸素P-O-Pは切断され、P_2O_7^<4->やPO_4^<3->などの構造単位が増加していくことから、ガラスネットワーク中のクロス・リンケージの密度の増加が耐水性を向上させたものと考えられる。ガンマ線を照射することによって、浸出率は1桁近く悪くなったが、FT-IR、Laser Ramanどちらのスペクトルにも照射前後に変化が見られず、大きな構造的変化は起きないことが分かった。
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