本研究では、MgO-P_2O_5系ガラスおよびそれを用いた廃棄物ガラス固化体の浸出挙動を調べるため、異なる浸漬液を用い、異なるガラスの組成で浸出試験を行った。浸漬液に水と酸を用いた場合は浸出量からガラスの溶解挙動を調べることができたが、アルカリを用いた場合はガラスの溶解とともに析出物の生成が多く見られたため、浸出量からガラスの溶解挙動を調べることはできなかった。母ガラスでは、浸漬液に水と酸どちらを用いてもガラスの溶解は水和反応が支配的となった。リン酸塩ガラスの溶解には、主にガラス中の金属元素架橋構造の水和反応とP-O-P結合の加水分解反応による二つがある。リン酸塩ガラスは長い鎖状の重合リン酸アニオン同士が修飾金属元素によってイオン結合されている。このイオン結合が切れ、重合リン酸アニオンが表面からほどけるように溶けるのが水和反応による溶解で、鎖状の重合リン酸アニオンのP-O-P結合を開裂させて溶けるのが加水分解反応による溶解である。しかし、これら二つの反応の活性化エネルギーは水和反応の方が加水分解反応よりも低くなるため、リン酸塩ガラスの溶解は水和反応が支配的に進むと考えられる。一方、廃棄物ガラス固化体では、浸漬液に水を用いた場合、廃棄物元素Mによる結合力の強い金属元素架橋構造のP-O-M結合によって、ガラスの溶解はP-O-P結合が開裂する加水分解反応が支配的となった。しかし、浸漬液に酸を用いると水和反応が促進され、水では切断することのできなかったP-O-M結合が切断され、水和反応が支配的となった。以上のことから、ガラスの溶解はガラス表面からガラス構造中の結合を切断することで生じ、その際、水和反応と加水分解反応どちらの反応が支配的にガラスの溶解を進めるかは、浸漬液のpHや温度とガラス構造中の金属元素架橋構造、P-O-P結合の結合力に関係すると考えられる。
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