研究概要 |
金(Au)や白金族金属(Pt,Pd,Rh)は電子部品、自動車用排ガス触媒をはじめ、様々な分野で使用されている。しかし、金や白金族金属に対するニーズの高まりと稀少性から、価格は急騰し、その安定確保が大きな課題となっている。そこで、本研究では抽出剤と界面活性剤からなる混合逆ミセルを利用した溶媒抽出法を用いて、産業廃棄物から金あるいは白金族金属のみを選択的に分離回収し、逆ミセル中のナノ反応場に濃縮された金属イオンを還元することでナノ粒子を製造することを目的とする。 初年度は、まず模擬産業廃液として、AuCl_4^-,PtCl_6^<2->,PdCl_4^<2->,Zn^<2+>,Cu^<2+>,Ni^<2+>,Fe^<3+>合計7種の金属イオンを含む塩酸溶液から金イオンのみを選択的に抽出する手法を検討した。ここでは非イオン性三座配位子であるN,N,N',N'-tetra(n-octyl)diglycolamide(TODGA)とカチオン性抽出剤tetraoctylammonium bromide(TOAB)を抽出剤として用い、抽出分離能における比較を行った。その結果、TOAB系では7種の金属を含む水相からPd,Pt,Auイオンを抽出するため、遷移金属との分離が可能であったが、クロロアニオン種として存在するPd,Pt,Auイオン間の分離が全くできなかった。一方、TODGA系ではAuイオンのみを選択的に抽出し、他の金属イオンは全く抽出されないため、1回の工程で金イオンのみを回収することが可能であった。 来年度はさらに、TODGAと界面活性剤(AOT)からなる混合逆ミセルを形成させ、金イオンのみを逆ミセル内のナノ空間に濃縮し、還元を行うことでナノ粒子化を行う。
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