平成22年度は、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDの真空容器内にモード変換電子バーンシュタイン波加熱を実現するための新たなミラーを設置し、それを用いた実験を行った。新ミラーはプラズマ閉じ込め磁場を生成するヘリカルコイル直近に設置されている。既設の弱磁場側入射アンテナからのEC波ビームを新ミラーを介して基本波共鳴磁場強度以上の強磁場側からプラズマ中に入射することで、基本正常波の遮断密度以上の高密度プラズマ加熱が可能な基本異常波加熱または電子バーンシュタイン波加熱の実現が期待できる。 実験では、5MWの中性粒子入射加熱装置NBIで維持した線平均電子密度7.5~8x10^<19>m^<-3>の高密度プラズマに対して、20Hzで100%の電力変調をかけた775kWの77GHzEC波を新ミラー経由により強磁場側から入射した。77GHzEC波のプラズマ遮断密度は7.35x10^<19>m^<-3>である。新ミラーを介した高磁場側入射により、プラズマ遮断密度以上のオーバーデンスプラズマにおいてもEC波電力変調に同期した顕著な蓄積エネルギーの上昇が見られた。蓄積エネルギーの時間変化から評価した吸収パワーは600kW程度で、加熱効率は80%弱であった。一方、通常の弱磁場側入射の場合には蓄積エネルギーには変化がなく、加熱効果は見られない。 これらの結果から、本研究は当初の計画通り順調に成果を上げていると言える。今後は基本異常波加熱と電子バーンシュタイン波加熱それぞれの効果の同定を行っていく。
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