研究概要 |
BaFBr(I):Eu^<2+>輝尽性蛍光体では、ミリグレイ以上の比較的高い線量のX線を照射した試料や繰り返し使用した試料に、白色可視光を長時間照射しても、潜像が消去されずに600nm近傍の励起光で読み出されてくる現象(以下「消去不全現象」といい、観察される光を「消去不全光」という)が生じる。これらの試料では、従来の読み取りに用いられている600nm付近の電子以外に短波長側の深い準位に捕獲された電子が存在し、これが消去不全光の原因となっていると考えられる。本研究の目的は、これらの電子を利用することで、大線量側にダイナミックレンジを数桁拡大した線量計として開発することである。本研究では以下の成果を得た。1.消去不全光がPSL(輝尽発光,Photo-Stimulated Luminescence)であることを検証したうえで、蛍光体中に深く捕獲された電子及びその励起-PSL発光モデルの考案を行なった。2.BaFBr組成の輝尽性蛍光体の汎用されている代表的なプレート3種Agfa,Kodak及びFujiについて、短波長側のどの準位(波長)に電子が捕獲されているのか、分光したUV光を用いて波長の特定を行った。Agfa,Kodakではいずれも324nmに、またFujiでは320nmに大きなピークをもつがこれ以外に、Agfaでは、345,375及び420nmに、また、Kodakでは345nmに、Fujiでは345,380nmに小さなピークをもつことが明らかになった。3.5.0~35.0GyのX線を照射したところ、いずれのプレートにおいても、それぞれの波長のピークの大きさは照射線量に依存しており、35.0Gyまでピーク高さは上昇していることが観察された。4.これらの電子は、UV光を光源として各波長の干渉フィルターを用いて固有の波長で選択的に励起後、630nmのレーザー(2段階励起法)で読み出せることがわかった。さらに、未使用試料を2段階励起法で調べた所、照射試料より量は少ないもののそれぞれの特定波長に電子が存在することが示された。この電子は紫外-白色蛍光灯光同時照射法で消去することができたが、室温に3ヶ月放置すると再び短波長側の深い準位に戻ることが観察された。
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