本研究では、密封シート線源を用いたホールボディカウンタ校正用ファントムを開発する。これは、ランドファントム等の各スライス間に薄い密封シート線源をサンドウィッチしたものである。このファントムには従来の樹脂容器ファントムとは異なり、(イ)人体の実際の形状により近い、(ロ)漏洩による検出器や環境を汚染する心配がない、(ハ)体内分布を再現できる、(ニ)種々の核種に対応可能である、などの長所がある。 平成21年度では、人体横断面と同程度の面積を有する複雑なパターンのシート線源が安全に作製できることを示した。 平成22年度では、(1)モンテカルロシミュレーションによる本方法の特徴の理論的解析、および(2)ファントム測定用計測システムの構築を実施した。結果を要約すれば次のようになる。 (1) シミュレーションの結果は、シート線源と体積線源の両者で計数効率に差の無いことを示しており、シート線源が体積線源を十分良好に模擬できることを示せた。また、0.1から1.5MeVと広範囲に亘るガンマ線に対する計数効率を評価することができた。 (2) シンチレーション検出器(3インチ径NaI)と鉛遮蔽体とを組合せ、簡易型の計測システムを構築した。本システムのバックグラウンド計数率、およびガンマ線に対する計数効率を実測評価し、23年度に作製するセシウム-137のホールボディカウンタ校正用ファントムの評価に用いる計測システムを整備することができた。
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