水素同位体分離への適用性を調べるため、ハフニウム水素化物で発見された相転移現象と、その同位体効果を用いた同位体分離法の実現性について明らかにするため、本年度は以下の研究を実施した。 1.ハフニウムの軽水素・重水素-吸収・放出挙動調査 詳細な熱分析によって、水素量がH/Hf比で1.2から1.35の水素化物において、これまで360K付近と390K付近に見られた熱異常によるピークの他に、470K付近にステップ状の熱異常が観測された。同様の熱異常は重水素試料においても見られた。3つの熱異常の温度は若干重水素試料で高く同位体効果が見られた。その差はステップ状の熱異常温度で最も大きくなった。X線回折による構造解析において、温度を変化させたときの変化からα相とδ'相に加えて、準安定相のγ相(HfH_<1.0>)が存在することがわかった。このγ相は固溶した水素が規則的に並んだ状態であるので、その安定性が水素と重水素で異なる性質を使った同位体分離への適用可能性が考えられる。 2.他の水素吸蔵金属の検証 ハフニウムと同族のジルコニウムについても水素化試料について熱分析を行った。その結果ハフニウムと同様なステップ状の熱異常を観測した。これまでに構造解析から存在が示唆されていた準安定相のγ相の存在を熱測定においても確認した。しかしながら、水素組成の変化によってその温度が大きく(100K程度)変わることも観測された。 以上、熱分析によって、状態図にない準安定相の存在を確認するとともに、その相境界についての知見を得ることができた。
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