今年度(平成23年度)は、昨年度に製作した実験装置に改良を加えて、地層を模擬した多孔質層内の相変化現象を解明するための実験を行うとともに、数値シミュレーションによる検討も行った。さらに、地層内に地下水流れが存在する場合にも適用できるように、螺旋管型地中熱交換器方式の採熱特性を検討するための数値計算プログラムを改良し、併せて数値シミュレーションを行った。 実験装置には、多孔質層内の凍結挙動を可視化するためにアクリル製の密閉容器を用いた。また、冷却面を実現するために銅製冷却面の背後にペルチェ素子を配置し、これにより電気的に冷却面温度の制御が可能な構造とした。 この実験装置を用いて、ガラス粒子の充填高さ、および多孔質層の温度伝導率が、多孔質層内における水の凍結挙動に及ぼす影響について検討した。その結果、1)ガラス粒子の充填高さが高くなるにしたがい、全体の凍結量は減少する、2)多孔質層の温度伝導率が増加するにしたがい、容器内の凍結完了時間が減少する、ことが明らかになった。さらに、実験結果と数値シミュレーション結果を比較したところ、両者は、凍結層の形状のほか、流れ場、温度場ともによく一致した。 地層内に地下水流れが存在する状況下において、地中熱交換器を用いて採熱を行うと、地層の温度状況に依存するが、水分を含んだ周囲の地層内に相変化(水の場合は凝固)が生じ、この相変化現象が地中熱交換器の採熱量に大きな影響を及ぼすことが予想される。本研究は、このような相変化現象を伴う場合にも適用できる数値計算プログラムを作成し、螺旋管型地中熱交換器方式の採熱特性を明らかにしようとするものであり、その意義と重要性はきわめて高いと考えている。
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