研究概要 |
高分子化合物と塩化パラジウムを所定量加え調製した紡糸液を用い、電界紡糸法により極細鋳型繊維を調製した。この極細鋳型繊維からなる不織布を無電解めっき浴(ニッケル)に浸漬することで、鋳型繊維上にニッケルーリンめっきを施すことができた。無電解めっきを行う際には,スズーパラジウム混合触媒溶液に浸漬する触媒化工程を行うことが多いものの,我々は,この触媒化工程を実施していない。そこで鋳型繊維に対し,めっき浴中に含まれている還元剤による処理を行い,その際に起こる変化を検討した。鋳型繊維をホスフィン酸ナトリウム一水和物水溶液(pH6)に5分間浸漬処理を行った後、SEM観察を行ったところ、処理を施した繊維上に多数の粒子が析出した。この観察像は,Ermanらが報告している塩化パラジウムとポリアクリロニトリルーアクリル酸共重合体を含む紡糸液を用いて電界紡糸を行い,得られた不織布をヒドラジン水溶液で還元処理を行った報告と類似していた。この析出したPd粒子が,めっき皮膜形成の触媒となると推察された。 このめっき処理後の不織布を400℃~550℃、空気中で加熱処理することで、鋳型となっていた高分子化合物を分解除去し、中空極細酸化ニッケル繊維を得ることができた。得られた中空繊維のサイズは、鋳型繊維の繊維径、めっき時間などに依存しており、内径0.1μm、外径0.3μm~内径2.5μm、外径4.8μmの中空繊維を得ることができた。 これらの中空極細酸化ニッケル繊維を電極として用いた電気化学キャパシタを試作した。水酸化カリウム水溶液を電解液に用い、この電解液に24時間浸漬した後、電気化学測定を行ったところ、水酸化ニッケル←→オキシ水酸化ニッケルの電気化学反応を示す応答が観測された。試作セルを用いた充放電試験結果から、理論容量の1/10程度の容量を示す電極も作製できたものの、容量にばらつきが見られ、その点は今後の改良が必要と考えている。
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