研究概要 |
平成22年度の研究成果は,大きく次の3つ点にまとめられる。 (1)酸化ニッケルからなる極細中空繊維を電界紡糸法と無電解めっき法を組み合わせる事により調製可能であったこと、 (2)調製した極細酸化ニッケル中空繊維を高容量電気化学キャパシタ用電極に利用することが可能であったこと、 (3)(1)と同様な方法により極細酸化銅中空繊維も調製可能であったこと,に集約される。以下,各点について詳細に説明する。 (1)紡糸に用いる高分子化合物の種類,電界紡糸条件(紡糸液濃度,印加電圧等)を変化させる事により,鋳型繊維の繊維径を200nm~6μmの範囲で,任意で制御することが可能となり,この繊維径を反映した内径を有する極細酸化ニッケル中空繊維を調製することが可能となった。また,めっきの際には,Ni-Pめっき浴を用いているため,析出するめっき層は,Ni-Pであるが,鋳型繊維の熱分解時に,酸化され,リンは五酸化二リンとなり昇華し,最終的には酸化ニッケルとなることが,粉末X線回折などから明らかとなった。 (2)(1)で調製した極細酸化ニッケル中空繊維単独では機械的強度などが不足していたため,これを発泡ニッケル支持体と組み合わせる事により,酸化ニッケル複合電極を作製し,これを用いた電気化学キャパシタの充放電試験などを実施した。発泡ニッケル支持体単独の静電容量(1.4F/g(電極総重量))の約20倍の容量(33F/g(電極総重量)))を有する電極が作製可能であった。めっきされたニッケルの単位重量あたりに換算すると,298F/gの容量に対応する値となった。 (3)極細酸化ニッケル中空繊維作製と同様な手法により,種々の内径,外径を有する極細酸化銅中空繊維を調製することができた。内径/外径の制御可能範囲は,100nm~4μm/300nm~7μmであった。なお,めっきされた銅層は,鋳型繊維の熱分解時に,酸化され最終的には酸化銅となることが,粉末X線回折などから明らかとなった。
|