研究概要 |
昨年度に引き続いて,電界紡糸法と無電解めっき法を用いて,金属あるいは金属酸化物中空繊維を調製した。今年度は,対象の金属あるいは金属酸化物として,ビスマス及び酸化ビスマス,あるいは酸化亜鉛を選び研究を実施した。得られた金属あるいは金属酸化物中空繊維の構造は,外見などは,走査型電子顕微鏡(SEM)観察,化合物の構造などは,粉末X線回折測定(XRD)などにより行った。以下にその概要を記載する。 1.ビスマスあるいは酸化ビスマス中空繊維の調製に関する研究結果について 鋳型繊維を調製する高分子化合物としてポリ塩化ビニル(PVC)あるいは,ポリスチレン(PS)を用いて研究を行った。PVCを用いた際の鋳型繊維の繊維径は,約0.5μm,PSを用いた場合は,約0.7μmであった。これらを鋳型として無電解ビスマスめっきを行い,鋳型繊維表面にビスマス層を形成させた。ビスマス層が析出していることは,XRD測定により確認した。得られたビスマス-鋳型繊維からの鋳型の除去は,各高分子化合物の良溶媒である有機溶媒を用いて,鋳型繊維の溶解除去を行った。従来行っていた加熱分解による鋳型繊維の除去は,高分子化合物の分解温度(約400℃~500℃)よりもビスマスの融点が低く(271.3℃),形状の維持が困難なためである。鋳型繊維の除去の確認は,熱重量分析装置を用い,鋳型除去後の試料を加熱し,その際における重量変化が,殆ど起こらないことから確認した。鋳型の除去率は,ほぼ90%以上であった。中空構造の確認は,SEM観察により行い,鋳型繊維径に対応した中空構造が形成されていることを確認した。しかしながら,めっきの不均一さなどから,中空繊維側面は,かなり粗化した状態となっていた。酸化ビスマス中空繊維は,このビスマス中空繊維を空気中で加熱処理することにより得た。 2.酸化亜鉛中空繊維の調製に関する研究成果について、 上記のビスマスとほぼ同様な手法により,酸化亜鉛中空繊維を調製した。酸化亜鉛層の形成は,XRD測定により確認した。また,得られ花酸化亜鉛中空繊維の内径は,従前のものと同様に鋳型繊維径を反映する結果が得られた。
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