研究概要 |
昨年に引き続き、電気化学沈降法によって合成した水酸化マンガンへの水溶液中での電気化学的リチウム挿入反応を中心に検討を進めた。電解沈降水酸化マンガンへの電気化学的なリチウム挿入は、水酸化リチウム水溶液を電解液とした場合、OV(Vs Hg/HgO)以上の電位において、酸化電気量に比例した量のリチウムが導入されるが、酸化初期段階においてリチウム挿入が認められないことから、マンガン酸化にともなう結晶構造の変化がリチウム挿入の進行に大きく関わっていることが予想された。しかしながら、酸化と還元のサイクルを繰り返しても可逆的な酸化還元対を示さないことから,この物質をそのまま二次電池正極とすることは困難であることがわかった。ただ、サイクルの増加に伴いリチウム挿入量の増大が認められることから、スピネルマンガン酸リチウムの前躯体としては有用な手段と考えられる。 また、電気化学沈降法による水酸化マンガン合成におよぼす異種金属の共存効果について検討したところ、硝酸アルミニウムを特定の比率で共存させて電解した際に、水酸化マンガンとも水酸化アルミニウムとも異なるX線回折パターンを示す物質が得られることを明らかにすることができた。この物質の種々の電解液中における電気化学的酸化還元挙動を調べたところ、水酸化カリウム水溶液中において、およそOV(vs Hg/HgO)付近に、マンガンの2-3価の酸化数変化に起因すると推定される極めて可逆性の良いレドックス電流ピーク対を安定的に示す物質が生成することを見いだした。この物質は層状構造特有のXRDパターンを示し、バーネサイト類似のマンガン酸化物が、アルミニウムによって安定化したものと推定された。その詳細な構造や酸化還元反応機構については検討中である。
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