本年度は、non-CGメチル化に関わる遺伝子の変異体とmom1変異体との多重変異体を作製し、それらにおける内在性不活性化領域由来RNAの蓄積を解析し、以下の結果を得た。(1)mom1変異体で強く活性化されるトランスポゾン様ゲノム領域(AtIS112A、MULE-F19G14)はnon-CGメチル化機能を失ったdrm2cmt3二重変異体では弱い活性化しか示さず、mom1 drm2cmt3三重変異体でもmom1変異体と同程度の活性化を示す。一方で、(2)プロモーター領域タンデムリピートのメチル化により制御されるSDC遺伝子は、mom1変異体では弱い活性化しか示さないが、drm2cmt3二重変異体で強く活性化され、mom1drm2cmt3三重変異体でもdrm2cmt3二重変異体と同程度の活性化を示す。さらに、(3)トランスポゾン様配列であるROMANIAT5は、mom1変異体およびdrm2cmt3二重変異体のいずれにおいても弱い活性化を示すが、mom1drm2cmt3三重変異体では強く活性化される。以上のことから、(1)の領域のサイレンシングではMOM1が、(2)の領域ではnon-CGメチル化が主なサイレンシング経路として寄与し、(3)の領域ではMOM1とnon-CGメチル化経路が冗長的にサイレンシングに寄与する可能性が考えられた。また、これらの領域におけるnon-CGメチル化の程度はさまざまだが、これらのメチル化の程度と上述の多重変異体における活性化のパターンに明確な関連性は見られなかった。さらに異常RNA分解経路に関わる遺伝子(UPF1、UPF3)の変異体とmom1変異体、さらにRdDM経路で機能するRDR2遺伝子およびPTGS経路で機能するRDR6遺伝子の変異体をさまざまに組合せた多重変異体を作製し、現在までにmom1upf3rdr2三重変異体で極めて特徴的な形態異常が現れることを明らかにした。
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