研究概要 |
ゲノム刷り込みの実験モデルとして、独自に樹立した亜種間雑種ES/EG細胞の性質を解析している。ES/EG細胞において刷り込み遺伝子、Igf2r、Air、H19、Igf2、Kcnq1,Kcnq1ot1の発現解析を行った。MSMのゲノム配列情報とB6との間でcSNPの検索を行い、制限酵素多型を多数発見した。この制限酵素多型を利用して、刷り込み遺伝子群の発現解析を行った。未分化ES細胞においては、刷り込み遺伝子の発現は様々であったが、分化後のES細胞においてはいずれも刷り込み型の発現様式を示した。一方,刷り込み遺伝子のメチル化が全く失われているEG細胞株においては分化後も,両アレルから発現していた。以上から,刷り込み型遺伝子発現を支配しているのはDNAのメチル化であり、その発現様式が成立するのは分化後の細胞であることがわかった。 刷り込み型遺伝子発現制御のクロマチンレベルでの制御機構を明らかにするために、クロマチン免疫沈降法(ChIP)についての技術確立を行った。抗修飾ヒストン抗体を用い、亜種間雑種胚由来線維芽細胞を対象にChIPを行った。その結果、予想されるパターンで刷り込み遺伝子座のクロマチンにヒストン修飾が入っていることが確認された。亜種間のゲノムに存在するSNPsにより制限酵素多型を利用して、クロマチンの修飾がアレルの由來で異なり、その割合を定量的に検出する技術を確立できた。ES細胞の試験管内分化系により、生殖細胞分化過程とゲノムの再プログラム化を解析している。Vasa-Venus BAC Tgマウスから樹立したVasa-Venus ES細胞は分化させることで、効率かつ再現性よくPGC様細胞(iPGC)に分化させることができる。このiPGCをVenusの蛍光を利用して分取することができた。現在そのゲノムDNAのメチル化の状態、及びRNAの発現プロファイリングを行っている。
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