研究概要 |
主にコナラ属樹木の葉にコロニーを形成するTuberculatus属アブラムシにはアリ共生種とアリ非共生種が含まれる。本属アブラムシは,寄主非転換性で且つ単為生殖世代の成虫はアリ共生・季節・コロニー内密度に関係なく全て有翅虫となることが知られている。5個のマイクロサテライトDNAマーカーを用いた集団遺伝学的解析の結果から,アリ共生種のT.quercicolaとT.sp.Aの集団遺伝構造は著しく局所的な特徴を示し,これらの種が翅を持つにもかかわらず,移動や分散をほとんど行っていないことが示唆された。これらのことから,アリ非共生種と比べて,T.quercicolaは飛ぶためのエネルギーが体サイズに比して低くなっていることが考えられる。アリ共生と脂質含有量割合の関係を調べるために,野外のカシワの葉上で飼育したアリ共生種T.quercicolaと非共生種T.paikiを対象に脂質重量を7月から9月まで経時的に測定した。その結果,7月の時点ではアリ共生種T.quercicolaの脂質割合は非共生種T.paikiに比べて低かったが,日照不足や多雨のために非共生種T.paikiが殆ど発生せず,処理反復数が十分でなかったために,統計的な有意差は得られなかった。8-9月では両種の脂質割合に差はなかった。T.quercicolaはT.paikiに比べ,季節進行とともに体サイズが小さくなる傾向が見られた。これは寄主植物の栄養レベルの低下がアリ非共生種よりも直接的に影響を与えていることが考えられた。
|