本研究では、積雪時の低温下において特有の土壌微生物群集のなかでも重要なリター分解に関わる菌類はどのような種によって構成されるのか、またそれらが低温に適応した生長特性や分解酵素の特性を明らかにすることを目的としている。そこで、初年度は研究実施計画に従って、リター層が凍結するかしないか(0℃)が、リター分解に関わる菌類群集とその活性に与える影響を検討するために、冷温帯林の広がる北海道で積雪の深さが異なる調査地を選定し、リターバッグを設定した。調査地は多雪地域として、名寄および小樽、少雪地域として、苫小牧および足寄の合計4カ所。さらに中間的な積雪量の地域として富良野に決定した。各調査地には温度計と積雪・土壌凍結深棒を設置した。北海道の主要な樹種であるミズナラとトドマツのリター(落葉)を2009年10月に集め、リターバッグに封入したものを10月下旬に各調査地に設置し、2010年の12月と3月に雪中から回収した。この間に各調査地の積雪量と土壌凍結深の調査を行ったところ、多雪地域では土壌凍結は起こらず、少雪地域では数cmから20cm以上の深さまで土壌凍結することが明らかになった。また、研究実施計画に従って回収したリターを実験室で表面殺菌し、シャーレ内の培地上に接種し、5℃の低温で培養した。その数は各調査地から回収したミズナラとトドマツのリターについて40~80繰り返し行った。現在、これらから約900シャーレの培養が進行中であり、既に200以上の純粋菌株が得られた。今後は次年度からの研究実施計画に従って、さらにリターバッグの回収と菌株収集し、顕微鏡による形態観察と、DNA解析によって種同定および種の推定を行う。
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