日本の植生において、ササは重要な植生要素になっており、樹木の更新や林床植物の多様性に大きな影響を与えている。また炭素固定においても大きな役割を持っている。2010年は阿武隈高地の南端に位置する小川群落保護林において、アズマザサ、ミヤコザサ、スズタケの3種を調査対象として、定期的に光-光合成速度関係の測定を行った。林冠は主に、ミズナラ、ブナ、アカシデが優占しており、林床には局所的に3種のササが優占している。アズマザサとミヤコザサは伐採跡地と林床、スズタケは林床を調査区として設けた。調査区の地上部バイオマスは、スズタケの林床が690g・m^<-2>と最も大きく、アズマザサは伐採跡地、林床でそれぞれ382、32g・m^<-2>であり、ミヤコザサは91、23g・m^<-2>であった(2009年9月)。また、開空率は伐採跡地では約45%、林床では約12%(2010年8月)であり、落葉後の林床は50~60%まで上昇した(2010年12月)。携帯型光合成測定装置(Li-6400)を用いて、それぞれの当年葉を2009年から2010年に測定した。最大光合成速度(PPFD=2000μmol・m^<-2>・s^<-1>、CO_2濃度=380μmol・mol^<-1>)は、伐採跡地においてはアズマザサ(13.8μmolCO_2・m^<-2>・s^<-1>)がミヤコザサ(10.7μmolCO_2・m^<-2>・s^<-1>)より大きな値を示し(2009年8月)、林床においてはスズタケ(7.2μmolCO_2・m^<-2>・s^<-1>、2009年8月)がアズマザサ、ミヤコザサ(それぞれ6.5、7.0μmolCO_2・m^<-2>・s^<-1>、2009年9月)より大きな値を示した。また季節的な変化は、伐採跡地においては両種とも夏季(2009年8月、2010年7月)が、林床においては開空率が大きくなる冬季(2010年12月)に最大光合成速度を示した。
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