研究課題/領域番号 |
21570018
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
和田 直也 富山大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40272893)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フェノロジー / 気候変動 / 地球温暖化 / 高山生態系 / ハイマツ |
研究概要 |
ハイマツの年枝伸長生長と気象要因・立地環境との関係を明らかにし,地球温暖化の影響指標を確立する目的で,富山県立山山地の森林限界以上の高山帯に,標高の異なる四つの永久調査地を設置し,一夏の伸長生長フェノロジーを標識した個体(主幹)を対象に継続調査した。 枝先に取付けてある温度ロガーを用いて消雪日を推定したところ,2010年においては5月21日~6月30日,2011年においては5月14日~7月1日,2012年においては5月3日~7月7日となり,前年に比べ平均で約4日遅かった。消雪日と最終的な伸長量との関係を見ると,両者には負の関係が認められた(r = -0.506)。伸長成長期間内の有効積算温度は,全個体平均で289.1±186℃・日(±27.7)であり,集団間の差は大きくなかった。全個体の消雪日の変動係数は27.9%であったのに対し,伸長終了日の変動係数は6.7%に過ぎなかった。これらの結果は,成長開始からある一定の有効積算温度に達すると伸長成長が止まることを示唆している。 消雪日が特定できた三年間のデータを用いて解析したところ,その年の伸長成長量は,前年の伸長終了後に得られた有効積算温度と関係していることが分かった。 また,これらの調査地を含む五つのハイマツ群落において,リターフォール量を調べたところ,伸長生長量が多い群落(枝の周辺)ではリターフォール量が多いこと,そして土壌水分量が多い群落ではリターフォール量が少ないことが昨年に引続き確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度ロガーによる消雪日の推定と精度の高い野外調査が予定通り実施できたことにより,複数年のデータを得ることに成功し,気候変動が伸長生長に及ぼす影響の実態が掴めてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
引続き同様な手法でデータを蓄積し,年変動の大きな消雪日や夏季気温,土壌水分と,伸長生長量並びにリターフォール量との関係を解析・予測できるデータセットの充実を図りたい。
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