「藻食性動物は藻類を減らし、小サンゴの生存と成長を高める」を仮説として、沖縄のサンゴ礁で普通に見られるウスエダミドリイシを材料として、藻食性動物が藻類とサンゴに及ぼす影響について、ケージなし(コントロール:魚類の影響がある条件でのサンゴの生存と成長を評価)、ケージありで海藻は除去しない(魚類の影響がない条件で、サンゴと海藻の競争を評価)、ケージなしで海藻を除去する(魚類と海藻の影響がない条件での、サンゴの生存と成長を評価)の処理群を設定し、野外実験を行った。その結果、藻食性魚類は大型藻類の繁茂を抑えること、大型藻類のみならず芝状に生育する藻類が小サンゴの成長を阻害することが明らかとなった。これは、これまでサンゴ礁では大型藻類がサンゴの生育を妨げるとして注目されてきたことに加え、芝状藻類もサンゴの生育を妨げる可能性があることを意味する。また、ケージなしでは藻類の影響よりも、魚の捕食や強い光が、サンゴの生存と成長に影響を強く及ぼすことも明らかとなった。 「サンゴの被度が低ければ、小サンゴは魚類の捕食を受けて生存と成長が低くなる」を仮説として、沖縄本島の本部町と恩納村海域において、サンゴの被度が高い地点と、これと1km程度離れ、環境条件が似ているがサンゴの被度が低い地点をセットで1地域とし、コユビミドリイシの移植実験を実施した。この結果、どちらの地域においても、サンゴの被度が低い地点で移植したサンゴへの魚類の噛み痕が多かった。このことは、大規模攪乱後の回復には、サンゴ被度の閾値が存在し、サンゴの加入が少なく被度が閾値を超えない場合には、加入した小サンゴ魚類の捕食を受け、生存と成長が低く、サンゴ群集が回復しないことを示唆する。
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