沖縄県南大東島において、ダイトウコノハズクの繁殖生態調査、捕獲調査、前年捕獲し足輪を付した個体の確認調査、鳴き声録音調査、および昨年までに電波発信器を用いて追跡調査した個体のデータ解析を行った。さらに、付加的な研究として、琉球列島の島々において録音した鳴き声の解析を行った。 繁殖生態の調査は8年目となり、固有亜種であるダイトウコノハズクの個体群動態が明らかになりつつある。捕獲調査はつがい関係を明らかにするために本研究において書くことができない調査である。本年度捕獲による調査結果は来年度の足輪確認によって明らかになる。昨年の足輪確認により、本年度は血縁間の配偶はないことが明らかになった。家系が明らかな個体の鳴き声の録音は15個体以上について実施できた。このデータにより父子間の鳴き声の類似性、娘の配偶者と実の父親の鳴き声の類似性の解析が可能に塗る。明確な結果を得るためには、本年のデータだけでは不十分で来年度も継続調査が必要である。分散データの解析により、出生地分散には性差があり、雄が巣立ち後短期間で近くに、雌は時間をかけて動き回り遠くに定着することが明らかになった。行動が制約される小さな海洋島で得られたこの結果は近親交配と分散の関係に画期的な情報となる。 現在、リュウキュウコノハズクは琉球列島、南大東島、蘭嶼で、それぞれ亜種に区分されている。しかし、鳴き声のスペクトログラムの解析により、南大東島の個体群は明瞭に異なる鳴き声の特徴を持っていることがわかった。一方、琉球列島全域には同亜種が分布するとされているが、ケラマ海裂の南北で明瞭な違いが見いだされた。さらに蘭嶼の鳴き声の特徴はケラマ海裂以南の琉球列島の島々における鳴き声と区別ができないことが明らかになり、現在の亜種区分には見直しの必要性がある。
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