繁殖期の4-8月、なわばり行動が盛んな11-12月に南大東島において繁殖経過の追跡、繁殖成績を記録した。個体群生態学的な情報を蓄積した。成鳥をかすみ網で捕獲し、社会的なつがい関係、近親配偶の状況を明らかにした。巣内に滞在中の雛をもれなく捕獲し計測、採血、および標識を行った。2010年以前に足輪を装着した個体を探索することにより、分散先や配偶関係を明らかにした。足輸を装着した個体を探索確認した上で鳴き声の録音を行った。 社会的な配偶関係からは近親交配は確認できなかった。また分散先が確認できた雄については、社会的な父親との声の類似度合い、同様に分散先が特定できた雌についてはつがい相手と社会的な父親との声の類似度合いを査定可能な情報が整いつつある。社会的と記述するのは、つがい外受精が15%程度の確率で起こるため、遺伝的父親と区別するためである。これまでの研究から出生地分散には性差があり、雄が巣立ち後短期間で近くに、雌は時間をかけて動き回り遠くに定着することが明らかになっている。本年度も、同様の傾向が確認できた。本研究はダイトウコノハズクの雌が社会的な家族関係にある雄の鳴き声を持つ個体を配偶者として選択しない可能性を探ることに大きな目的がある。父親や兄弟の声に対する反応を野外で明らかにすることは実験操作が困難であるため、それぞれの個体が声の違いを認識できるかどうか査定を試みた。隣接なわばりの鳴き声がいつもの方向から聞こえるパターン、隣接なわばりの鳴き声が異なる方向から聞こえるパターン、知らない声を聞かせるパターンで実験を行った。異なる方向から聞こえる声、知らない声に対する反応が強く、声の識別が行われている可能性が示唆された。 非繁殖期に行われる分散個体のなわばり定着の促進、繁殖調査の効率化のために巣箱を設置した。ダイトウコノハズクによる巣箱使用率の低さは改善され、巣箱における繁殖誘致が奏功している。
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