本研究の目的は、島嶼生態系における地史的時間スケールでの食物連鎖の形成過程と、構成種の適応形質の進化を、伊豆諸島、伊豆半島、および本州におけるトカゲ、ヘビ類を含む食物連鎖を対象に、シマヘビとその餌生物であるトカゲ、カエルを対象とした系統地理学的解析を行い、島嶼環境における捕食者-被食者関係の成立順序と年代を推定する。そして、ヘビの食性転換にともなう新たな形質の獲得と、古い適応形質の消失過程に及ぼす、自然選択、遺伝的浮動・流動の相対的重要性を評価する。 23年度の主な成果は、以下の3項目である。 1)シマヘビの頭部形態の測定により、オカダトカゲを捕食することに特化した神津島の集団が長く幅の狭い頭部形態を示すことを明らかにした。本土のカエル食集団では、1つの集団内に幅広い頭を有する個体と狭い個体が含まれ、多様な形態をもっていることが明らかとなった。 2)シマヘビとその主な餌生物であるオカダトカゲの個体数がロトカ-ボルテラ式にそって、周期的に振動することが明らかになり、シマヘビの個体数が減少する過程で、頭部形態特に方形骨の長さに基づく、最大開口幅に対する強い自然選択の証拠を得ることができた。
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