研究概要 |
冬緑性の多年生草本であるヒガンバナは,夏季(6月から9月)には葉を持たないが,この時期にも新根を出し,栄養塩の吸収を行うことが明らかになっている。本研究は,(1)夏季における栄養塩の吸収量を他の季節との比較から定量的に明らかにすること,および(2)夏季における栄養塩の吸収が,フェノロジー(植物季節)や成長,葉の生理特性(光合成特性や耐凍性など)に与える影響を,他の季節との比較から評価することを目的としている。 平成21年度は,施肥時期の異なる条件下でヒガンバナを栽培し,葉のフェノロジーと生理特性を比較した。鱗茎直径を指標としてサイズをそろえたヒガンバナを,バーミキュライトを入れたポットに1個体ずつ植え,施肥量は同じだが施肥時期の異なる4処理を設定した。各処理における施肥の開始時期は次のとおりー処理1:4月中旬(落葉期),処理2:6月上旬(非展葉期),処理3:8月中旬(非展葉期),処理4:10月上旬(展葉期),施肥期間は7週間である。また,コントロールとして無施肥の処理5を設定した。ポットは,雨天時以外は屋外(川崎市)におき,必要に応じて潅水した。9月上旬から1週間おきに展葉数と葉長を測定し,葉の急速な成長がほぼ終了した11月下旬に,光合成速度(光強度1200μmol/m^2・s,CO_2濃度370ppmと1200ppm)と,葉が細胞外凍結を起こす温度を測定した。 秋の展葉は,夏季に施肥を行わなかった処理(処理4,5)で遅れる傾向が見られ,展葉数も少なかった。一方光合成速度は,展葉期に施肥を行った処理4で有意に高く,他の処理ではコントロール(処理5)も含めて有意差が無かった。また,細胞外凍結が起こる温度は-5~-6℃程度で,処理間で有意差は見られなかった。
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