研究概要 |
冬緑性草本であるヒガンバナは,夏季(関東地方では6月から9月)には葉をもたないが,主にこの時期に新根を出し,窒素を吸収することが明らかになっている。本研究は,これまで休眠期間とみなされがちであった葉の存在しない季節(非展葉期)に着目し,この時期の窒素吸収量を,葉の存在する季節との比較から定量的に評価すること,および,非展葉期における窒素の吸収が,展葉期のパフォーマンス(葉のフェノロジー,光合成特性,成長など)に与える効果を,展葉期における窒素吸収の効果との比較から評価することを目的としている。 平成22年度は,昨年度に引き続き,施肥時期の異なる条件下でヒガンバナを栽培し,葉のフェノロジー,初期生長(12月上旬の個体乾燥重量),および葉面積あたりの光合成速度(飽和光,370ppmおよび1200ppmの外気CO2)を比較した。昨年度は,非展葉期と展葉初期の窒素吸収の効果を比較したが,本年度はこれに加えて展葉中期における窒素吸収の効果も検討した。 非展葉期(6,7月)の施肥は,展葉初期(10,11月)の施肥(や無施肥)と比べて,展葉の開始を早め,展葉数を増加させること,また,初期成長を促進することが明らかになった。一方,葉面積あたりの光合成速度は,12月上旬の時点では,展葉初期に施肥を受けた個体で高く,これは,外気CO2濃度1200ppmにおいて特に顕著だった。しかし,展葉中期(1,2月)の施肥は,2月,3月における光合成速度に対して何ら効果をもたなかった。
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