研究概要 |
わが国の亜寒帯林には北海道に成立する北方針葉樹林と本州山岳域に成立する亜高山帯針葉樹林があり,その原生状態の林分は一般に数種が林冠層を共優占し,亜林冠層および下層の樹木群集においても林冠層と類似した樹種で構成されている。しかし,このような亜寒帯林における森林群集構造の決定に寄与する現象や樹種共存のメカニズムが十分に解明されているとはいえない。本研究では大面積長期動態モニタリング手法を用いて北方針葉樹林と亜高山帯針葉樹林の林冠動態と樹木群集動態について明らかにすることを目的として調査研究を行った。北海道東大雪北方林,長野県北八ヶ岳亜高山帯林,岐阜県御嶽亜高山帯林の3林分内に面積1~2haの永久調査区を設定して林冠動態と樹木群集動態に関する調査と解析を行った。各林分の優占樹種は,東大雪北方林ではエゾマツ,トドマツ,アカエゾマツの3種,北八ヶ岳亜高山帯林ではコメツガ,オオシラビソの2種,御嶽亜高山帯林ではトウヒ,オオシラビソ,コメツガの3種であった。各林分における林冠ギャップ形成率は東大雪北方林において他林分に比べてやや高い値を示し,林冠閉鎖率では御嶽亜高山帯林でやや低い値を示した。ギャップ形成率が高い期間ほど林冠木の死亡率は高い傾向があった。また,新規加入率はギャップ面積率および稚樹密度と関連性があった。さらに、林分全体の平均相対幹直径成長速度は近年の値の方が高い傾向があった。以上から,優占樹種が異なる亜寒帯針葉樹林においても森林動態のパターンは比較的類似していることが明らかとなった。。
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