研究課題/領域番号 |
21570027
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
西村 尚之 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (10387904)
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キーワード | 長期動態研究 / 亜寒帯原生林 / 全天写真 / 成長動態 / 林冠動態 / 針葉樹林 |
研究概要 |
本研究課題はわが国の亜寒帯林(北方針葉樹林と亜高山帯針葉樹林)における撹乱体制と樹種共存メカニズムを解明するために,各森林タイプの主要な優占樹種の動態と更新環境との関連性についての,定量的把握を目的として実施した.本研究課題における大面積長期動態モニタリング手法を用いた林冠撹乱体制に関連した森林維持メカニズムと環境変化に伴う森林の応答予測に関する研究は,今後の地球環境変動に対する森林保全的課題への重要なアプローチとなる.22年度には岐阜県御岳に成立する亜高山帯針葉樹原生林を対象に,当該年度は北八ヶ岳に成立する亜高山帯針葉樹原生林を対象に,すでに設置された1ha調査区内の5m×5mグリッド441交点において全天写真を撮影し、光透過率の等値線図の作成を行い,各個体の成長と関連させた解析を主要な出現樹種ごとに行った.当該年度に調査を実施した北八ヶ岳原生林分での光透過率の平均値は7%前後であった(一方,御岳では10%前後であった).北八ヶ岳では最近5年間における林冠木の全胸高断面積合計の変化は動的平衡状態にあったが,樹高1.3m以上の出現本数は増加傾向にあった.23年度に行った光環境調査と24年度に行った毎木調査から,各樹種の個体ごとの水平空間位置においての林床への光透過率を推定し,それらの成長速度との関係をモデルにしたところ,オオシラビソ,シラビソ,コメツガの3樹種では,光に対する反応パターンが明確に異なることが明らかとなった.つまり,このモデルを他林分に適応し,環境変動に対する亜高山帯針葉樹林の群集レベルでの応答を定量的に示すことにより,一般性ある説明が可能となると結論された.なお,次年度の最終年度においては北方針葉樹林において同様の調査解析を予定しており,その成果との比較解析が本研究の最終的な目的である樹種共存メカニズムの相違を解明するために重要となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的のひとつである各個体の光環境を定量的に把握する手法を確立できたことは極めて重要である.この方法は従来では行うことができなかった詳細な個体別光環境状態と成長特性との関係を定量的に把握できる.ただし,測定高の位置が一定であるというデメリットがあり,その方法の検討が課題であるとわかった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では個体ごとの光環境を定量的に推定するために,全天写真により解析を行った.しかし,全天写真の撮影位置として林床付近(地上から最大2m)での高さが限界であり,可能ならば,地上4~5mの高さ付近までの個体ごとの光環境を推定できることが望ましい.そのためには,遠隔操作が可能な全天写真撮影システムの開発が必要である.しかし,これについては本研究課題の補助金ではできないので,将来的な研究課題申請内容として検討することとした.また,モデルの構築には今年度はGLMを採用しているが,今後,ベイズモデルの採用も検討する予定である.
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