研究概要 |
本研究は,ステート遷移に伴なうPSIIおよびPSI超複合体の構造変化を明らかにすることを目的とする.そのため,本年度は,まずステート遷移前の無傷のPSII-LHCII超複合体の構造を決定した.まず,緑藻クラミドモナスのチラコイド膜可溶化条件を比較検討した上で,可溶化チラコイド膜をショ糖密度勾配超遠心法により分離し、得られたPSII-LHCII画分を酢酸ウラニルによってネガティブ染色した.単粒子解析の結果、高等植物よりもさらに多い,三量体LHCIIが片側3個ずつ(計6個)結合した粒子が観察された.植物の光化学系II超複合体は二量体のコア複合体の周囲を集光アンテナ(LHCII)が取り囲む形で構成されており(PSII-LHCII)、その構造はこれまでも電子顕微鏡を用いた単粒子解析により報告されてきた。過去の報告によると,ホウレンソウやシロイヌナズナなど高等植物では,三量体LHCIIが片側2個ずつ(計4個)結合した構造が観察される一方、緑藻クラミドモナスでは三量体LHCIIが片側1個ずつ(計2個)結合した構造のみしか存在しないとされていた。今回,改良された可溶化条件によるクラミドモナス標品において,高等植物ではCP24が結合している部分に,三量体LHCIIが結合していることが明らかとなったが,過去の報告では部分的に三量体LHCIIが脱落していたこと,クラミドモナスのPSII-LHCIIの構造は高等植物のそれよりも大きいことが明らかとなり,今後のステート遷移に伴なう構造変化解析に向け,基礎的な知見が得られたことになる.
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