研究課題
Acaryochloris marinaはエネルギーの低い近赤外光を吸収するクロロフィルdを主要色素としてもつため、光合成電子伝達系において、酸化還元電位の制御の面で非常に興味深い材料である。我々は、Acaryochloris marinaから高純度な光化学系II標品を単離精製することに成功し、可視および赤外分光法により、この反応中心がクロロフィルdの二量体であることを前年までに明らかにした。しかし、反応中心がクロロフィルdだとすると、そのエネルギーが小さいことから、酸化還元電位の調節を酸化側あるいは還元側で調節しなければならないが、どちらで行われているかは不明であった。我々は、本年度、還元側の初期電子受容体の酸化還元電位を滴定法により"直接"測定することにより、その調節は酸化側のエネルギーレベルを既存の光化学系IIと変えることなく、還元側で行われていることを明らかにした(Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 2010)。これは、水分解のための酸化還元電位は、電子の供給源として変えられないものであり、酸化側は絶対的な電位を維持しなければならないという、光合成水分解反応の普遍性を示す重要な知見であった。また、本年度にAcaryochloris marinaの光化学系II精製法を再検討し、よりアンテナサイズの小さい複合体の精製に成功した(2009年度植物生理学会年会)。この標品にクロロフィルαが結合していることをHPLC色素定量および分光測定により明らかにした。現在、この標品から、アンテナサさらに小さい最小の電荷分離能を保持した反応中心複合体の単離・精製を試みている。
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