研究課題
光合成光化学電荷分離反応を担うクロロフィルとして、これまでにクロロフィルa、ジビニルクロロフィルa、クロロフィルdが知られている。とりわけ、クロロフィルdは吸収極大を近赤外領域にもつため電子伝達の電位の制御が注目されてきた。我々は、この電位制御がどのような原理で行われているかを種々の生物種を用いて本年報告した(Shibamoto et al. FEBS lett. 2010)。この結果から、光化学系IIタンパク質複合体の酸化側の構造変化が還元側の電位に影響を与えている知見を得た。また、珪藻には他の藻類に無い新たな表在性タンパク質Psb31が存在し、酸素発生に重要な役割をもつことを報告した(Nagao et al., J.Biol.Chem.2010)。海洋性シアノバクテリアProchlococcusにおいて、クロロフィルaが合成されず、ジビニルクロロフィルaへ置換される時、アポタンパク質の構造変化も同時に生じているが、これをクロロフィルaしか持たないSynechocystisを形質転換することにより、ジビニルクロロフィルを強制的に発現させた細胞において、吸収および蛍光特性の比較を行った。この測定から、エネルギーおよび電子伝達反応において、色素とタンパク質の最適化が重要であるとの知見を得た(Mimuro et al., Biochim.Biophys.Acta2010)。このような最適化はクロロフィルdを持つAcaryochlorisにおいても存在すると示唆される。また、国際会議においてクロロフィルd生物Acaryochlorisとクロロフィルa生物の還元側の電位の最適化について報告した(Tomo, Okazaki Conference2010)。
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Biochim.Biophys.Acta
巻: 1807 ページ: 471-481
J.Biol.Chem.
巻: 285 ページ: 29191-29199
FEBS Letters
巻: 584 ページ: 1526-1530
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巻: 51 ページ: 718-727
http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/tomo/