研究課題
植物表皮の気孔は大気とのガス交換調節を行う重要な構造である。我々は高等植物における気孔の発達メカニズム、特に孔辺細胞分化や形態構築の仕組みを解明することを目的に、シロイヌナズナの気孔形成突然変異体を用いて孔辺細胞の発達に関わる遺伝子の単離・解析を進めてきた。本年度の本研究課題では孔辺母細胞の分裂後の細胞形態構築に関する変異体(MC79)について以下の解析を進めた。MC79はロイシンリッチリピートを持つ受容体型キナーゼの変異体で、孔辺細胞の伸長方向や湾曲方向が異常になる表現型を示す。このような表現型から、MC79は孔辺細胞の極性確立に必要な情報伝達を担う因子であることが推察された。MC79はメリステモイドから孔辺細胞母細胞の周囲の細胞膜に出現し、孔辺母細胞の成熟段階では発現が消失する。また、孔辺母細胞の分裂面の細胞膜には局在しないという特徴を持つが、この局在パターンは特異的なものであり、MC79プロモーターを用いて相同性が高い受容体型キナーゼを発現させても同様の局在は示さず分裂面にも局在が観察される。そこで、MC79タンパク質内に分裂面への局在を抑制している領域があると考えドメイン交換実験を行った。その結果、細胞内のキナーゼドメインが特異的局在パターンの原因であることがわかった。孔辺母細胞が分裂する際に、MC79受容体型キナーゼの細胞質キナーゼドメインと相互作用して局在を制限する仕組みが存在することが示された。
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http://shimane-u.org/nakagawa/index.htm