研究課題
光合成真核生物は、原核生物を起源とするオルガネラである葉緑体を有する。葉緑体は独自の環状ゲノムとともに、原核生物型の転写・翻訳のシステムを持つことが明らかにされている。独立栄養生物である植物は多くの物質生産系を葉緑体に依存している。我々は、葉緑体には栄養飢餓を感知し、自己防衛システムを機能させるためのシグナル伝達系が発達していると予想し、原核生物型の緊縮制御系の遺伝子探索を進めてきた。我々はこれまでに、葉緑体には緊縮制御システム、すなわちグアノシン4リン酸(ppGpp)合成酵素系が機能していることを酵素遺伝子レベルで明らかにしてきた。本課題においては、高等植物の葉緑体に特異的に存在するカルシウムイオン依存型の緊縮制御因子であるCRSH遺伝子の機能解析を進め、高等植物に発達しているカルシウムシグナル伝達機構の端末の一つとして葉緑体におけるppGpp合成酵素が機能することを平成19年度に世界に先駆けて示した。平成21年度は、葉緑体内でppGppの標的となるタンパク質AdSSの合成および精製を進め、GTPに対するGDPおよびppGppの阻害効果を検証した。その結果、ppGppが低濃度でAdSSの活性を阻害することが明らかとなり、ppGppによる葉緑体内のATP合成系への阻害的効果が示唆された。同時に、キャピラリー質量分析装置を利用する微量ppGpp検出系の構築に取り組み、大腸菌のppGpp高感度検出系の構築に成功し、学会において成果の報告を行った。
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Journal of Bacteriology 191
ページ: 4555-4561